物語には実地モデルが必要
アラエッサの故郷、スズメ踊り村大字六地蔵字柿ノ木草深ぬた場は、三島駅で伊豆箱根鉄道にのりかえて、
韮山駅で下車、ウシガエルの鳴く城池へと、韮山高校正門をへて、江川邸へつきぬける間道で、両側の柿若葉が、実に美しかった印象から、えらんだ。
今は、城池も公園にとりかこまれて、巨大なオタマジャクシのうき沈みする眺めも、コンクリートばりにされてしまったが、これをかいたころは、ふつうの貯水池で、カイツブリが馬のようにいなないては、潜水をくり返していた。
このあたりは、秋口にかけても、シオカラトンボの種類が多く、くるのが楽しかった。
シオカラのメスや未成熟のオスが、ムギワラトンボであることや、シオヤトンボなどは知っていたが、オオシオカラトンボや、ハラビロのオスが灰青色をおびているのは、新発見だった。
ついでに狩野川の堤防まで足をのばせば、バッタの百ひきくらいは、簡単にとれる。
木切れを黒くぬったのを投げると、メスとおもったオスがとびついてはなさないなど、大のおとなが、少年時代にもどって、遊んだものだった。
アラエッサにくらべ、一方のストンストンは、これといった故郷のイメージもわかないから、そのかわりを,胸中に住む二人の下宿人、永遠にさん、と、可及的すみやかくんに托したが、これが意外にも動いてくれない。しまいには、金魚の落椿まで加えたのだが、さっぱり動きださない。
モデルには実地が必要なことを痛感する。
この作品は、七つの森のイメージをひきずっていて、彫刻の名手ムササビのフーロ氏はサボテン森にいるし、小悪党キザルのワーガスも、顔をみせる。
そして、白藤山月の宮は、大雄山道了尊がモデルだ。
「ナイショでヒミツのクレヨン王国ー月のたまごー」より
© 2021 KUREYONOUKOKUWORLD. All Rights Reserved.